診察室だより
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12月 脱毛について
クリスマスのイルミネーションが街角を美しく彩り、一年の締めくくりの月がやって来ました。
毎朝の冷え込みも日ごとに厳しくなり、北の国では雪の便りも聞かれるこの頃ですがファッションの世界では寒さもなんのその、ここ数年、お若いお嬢さん方の間では、真冬でもノースリーブや半袖のニットが大流行のようです。昔と違って、肌を露出するファッションが定着するにつれて、今や、ムダ毛の処理も季節を問わず常識になりつつあります。
 そこで今月は、ムダ毛処理の方法の中で、ここ数年、急速に普及してきたレーザー脱毛について、従来の針脱毛と、またエステテックサロンの脱毛と比較しながらお話したいと思います。
@毛穴の構造と毛が生えてくる仕組み
A電気針脱毛とは
Bエステと医療機関の針脱毛の違い
Cレーザー脱毛とは?
Dエステのレーザー脱毛、通販の脱毛の器械について
E医療機関における針脱毛とレーザー脱毛の比較
F脱毛についてよく聞かれる質問、相談
@ではまず最初に<毛穴の構造と毛が生えてくる仕組み>についてです。
毛穴の構造
毛穴の構造
左の図は分かりやすく毛穴について書かれたものです。図の一番下に、毛母と書かれた部分がありますが、私たちの毛はその下の毛乳頭から栄養を受け、この毛母で作られると、従来云われてきました。その後更に研究が進んだ結果、今ではこの毛母の他に更にその少し上の毛隆起(buldge)という部分でも毛が作られるということが分かってきました。
また、毛は身体の部位によって(例えば頭髪、まつげ、腋毛など)およそ決まった長さまでしか伸びません。これはそれぞれがそれぞれで異なっているサイクルで、
成長期(毛が皮膚の表面へ出て太く伸びている時期)
退行期(毛の成長が止まり自然に抜け落ちるようになる時期)
休止期(毛を作るのを休む時期)を繰り返して生え変わっているためで、このサイクルのことを「毛周期」(ヘアーサイクル)とよびます。
以上のことから、実際に脱毛を効果的に施行するには、毛周期にあわせて、毛母を含む毛穴の下方1/3の確実な破壊が必要となるわけです。
Aでは、次に針を用いた<電気針脱毛>についてお話しましょう。
電気針脱毛
電気針脱毛
7〜8年前までレーザー脱毛がポピュラーになる以前の永久脱毛というと、この電気針による脱毛を永久脱毛とよんでいました。左は実際に毛穴にその脱毛針を刺した状態の図です。医療機関で使用される針は絶縁針とよばれるもので、毛穴の出口、皮膚の表面には電流が流れないように工夫されたものを用います。勿論、エイズ、肝炎など感染の問題がありますので、個人専用とすることはいうまでもありません。
毛の太さにあった脱毛針を、一本一本の毛穴に刺し込んで電流を流すことにより、毛穴周辺の組織が火傷となって破壊され、その結果としてムダ毛を再生させないようにする仕組みです。ひとつひとつの毛穴に対して、針を刺していくわけですから、熟練者の技術をもってしても、一時間で抜くことができる数は300〜400本、例えば両ワキでは1〜2時間かかります。また、前述しましたように、毛には、「毛周期」がありますので、それにあわせて1〜3ヶ月おきに通院し、回を重ねるごとに数は減りますが、全体で4〜8回の施術が必要となります。
Bここで最初にお話しました<エステティックサロンの針脱毛と医療機関で行っている電気絶縁針脱毛との違い>について述べてみましょう。
まず医療機関での脱毛のエステティックサロンとの一番大きな違いは麻酔(注射による局所麻酔)が出来るということです。勿論、痛みがそれほどでもない場合は、患者さんのご希望に応じて、麻酔をせず氷などで冷却しながら行うことも出来ます。

以下その特徴を述べますと
1、 麻酔が出来ることにより、痛みを感じずに出力の高い器械(電気が強い)が使えるため
一本一本の毛穴の通電時間が短くてすむ・・ 短時間で数多くの処理が出来る
(1本の通電時間は0.5秒)
確実に毛根の処理が出来る・・・・・・・・・ また生えてくるなどのトラブルが殆どない
2、 絶縁針であるため
 毛穴の出口、皮膚の表面にやけどの心配(色素沈着、瘢痕などのアト)がない
3、 レーザー脱毛では反応しにくい細い毛(メラニン色素の少ない毛)も処理出来る
4、 レーザー脱毛の出来ない色素の濃い部位(乳首回り、陰部など)も処理出来るといったことがあげられます。
一方、エステティックサロンでの針脱毛は、施設によって多少の差異があるにしろ、医師がいるわけではないので麻酔が出来ません。よって麻酔なしで使える器械となると出力が弱い器械とならざるをえず、
通電時間が長い・・・・一本一本の処理に時間がかかる、一回で沢山抜けない・・・・
何度も通うことになる・・・・結局、費用がかさむといったことになったり、強い熱が加えられないため毛根が完全に破壊されず、また生えてくるといったトラブルもしばしば聞かれるところです。
さらに、絶縁針ではないため、出力が弱いといっても、皮膚の表面にやけどのあとの醜い瘢痕(凹凸、ヒキツレ)や色素沈着のテンテンが残ったりするトラブルもあり得ます。

また、針の管理は最も重要なことの一つで、使い回しにしないことは言うまでもありません。それでも今まで、針の滅菌消毒が行き届いてなかったのか、手技が未熟だったのかは分かりませんが、刺した毛穴全てが化膿し、ウミをもったプツプツになって来院された患者さんの経験が私にも何例かあります。いずれも間もなく治られましたが、気の毒にしばらくは毛穴が黒くなって色素沈着に苦しまれました。
そもそも、電気針脱毛は厚生省によって、何年も前に医療行為と定められて久しいのですが、今でも医療機関以外で数多く行われていて、さまざまのトラブルが後を絶たないと聞きます。
私自身、エステティックサロンの全てを否定するつもりは毛頭ありませんが、医療機関での絶縁針脱毛の優れた点につきましては、充分、ご理解頂けたと存じます。
Cでは、次に<レーザー脱毛>についてお話を進めて参りましょう。
まず、最初にレーザーとはどんなものかということについて、簡単にお話したいと思います。レーザーという言葉自体は、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiationの頭文字をとって作った造語です。特殊な装置を使って同じ波長の光を集め、その原子を無数に発生させたもので、一つの方向にまとまって遠くまで拡散せずにエネルギーを伝えていくことと、特定の色だけに反応する性質があることが特徴とされています。
そこでこの二つの特徴を生かし、メラニン色素に吸収されるレーザーを用いて、皮膚の表面に傷をつけず、希望の部位に脱毛を起こさせるものがレーザー脱毛です。
使用されるレーザーの器械には数種類がありますが、現在の日本の医療機関ではロングパルスアレキサンドライトレーザーが最もポピュラーのようです。
レーザー写真
レーザー写真
 実際に脱毛する場合、施術は必ず毛を剃った状態で行います。これはレーザーによる脱毛の原理にも関係することですが、大きく分けて二つの理由があります。
 まず、レーザー脱毛はメラニン色素が大量に存在する毛根、および毛穴の中に残っている毛のメラニン色素にレーザー光が吸収され、そこで生じた熱エネルギーが周囲組織を破壊して脱毛をおこさせるという仕組みに基づいているため、毛を抜いてしまっていては効率が悪くなってしまうことが一つ目の理由、そして、二つ目の理由は毛を伸ばしたままでは、熱くなった毛が皮膚の表面にくっついて、やけどをおこす危険性がありうるということです。
ワキのレーザー脱毛風景
ワキのレーザー脱毛風景
レーザー脱毛のすぐれた点はいろいろありますが、まず、抜くことはできなくても剃ることが出来るというのは、針脱毛に比べて、特に夏のワキの下などにおいては、かなり楽といえるのではないでしょうか。そしてレーザーのヘッドは直径が約1cmありますので、その範囲の中の毛がわずか1ショット100分の2秒で脱毛できます。例えばワキを例にとると両ワキで約5分、麻酔も必要なく痛みも殆どありません。術後、ムコウズネなどは、2、3日照射した部位の毛穴がポツポツと赤くなったり、多少のかゆみが出たりすることもありますので軟膏を処方しますが、あとになったりすることは全くありませんし、入浴も普段通りできます。
結果については、どの程度の状態で満足するかは個人差が大きいのですが、ヘアーサイクルにあわせて数回(同じ部位について平均4〜8回くらいの人が多い)必要なのは針脱毛の場合と同じです。
D<エステのレーザー脱毛> <通販の脱毛の器械>
 時々、エステでかなりの回数のレーザー脱毛を受けているのに、なかなか終わりにならないと相談される方がありますが、エステで使っているレーザーは医療用レーザーではありません。医療用レーザーは医師だけしか操作できないと定められています。ですからレーザー脱毛と宣伝していても、エステで使っているのは出力が弱い半導体レーザーで、何度も当てることにより毛根を弱らせて脱毛させるものですから、そのような苦情に結びついてくるわけです。また、半導体レーザーではなく高周波やラジオ波を使っているところもあると聞きます。はっきり申し上げて、これらでも永久脱毛とは程遠い効果しか望めません。契約を結ぶ場合は費用だけでなく、どのような器械を用いるのか、また、施術の期間や効果、痛みの程度など、よく内容の説明を受け納得する事は言うまでもありませんが、合併症や副作用があった場合の治療費の負担や料金の返還などについてもよく確認しましょう。そしてトラブルが発生した場合、すぐに中止できるよう、一回ごとに支払うシステムのサロンを選び、少し様子をみたりするのも賢い方法ではないでしょうか。
 また、これも時々相談を受けることですが、通信販売で1、2万のお金でレーザー脱毛の器械を買いたいが効果のほどはどうか?といった内容のものです。一度でも医療機関で脱毛の器械を見たことのあり方はお分かりでしょうが、器械自体、畳半畳ほどもある大きなもので価格も相当高額なものです。そのような器械を用いて、かつ、ヘアーサイクルにあわせて何度も照射施行して、やっと望む脱毛が叶えられるものですから、この質問の答えはおのずとお分かりと思います。
Eそれではここで、具体的に<医療機関における絶縁針電気脱毛とレーザー脱毛の違い>について、それぞれの特徴などを比較しながら述べてみましょう。
針脱毛 レーザー脱毛
一回の処理本数 一本ずつ 直径1cmの範囲内にある本数
治療時間 両ワキで約2時間 両ワキで約5分
痛み 殆どの場合麻酔が必要 ごく軽度(麻酔は不要)
脱毛の永久性 確立されている まだ始まって10年の為、未確立
適応範囲 一度には小範囲のみ 広範囲 可
副作用、欠点 乾燥肌
産毛以外は細い毛も脱毛できる
熱損傷などもありうる
あまり細い毛は反応しにくい
その他の長所 軽症のワキガにも有効
陰部、乳輪なども可
段々毛が軟毛化する
色素の濃い部は不可
来院時の毛は? 4,5mm伸ばしておく 剃った状態で来院
以上、脱毛の一通りのことをまとめてお話しました。
Fでは最後に、日常、診察をしていて患者さんから、<脱毛についてよく相談を受けること>についてまとめてみましょう。
エステで受けた針脱毛に関して・・・・ なかなか数が減らない
同じ所にまた生えてきた
施術時痛みが強い
毛穴に一致して赤くなって痛い
化膿した
あとが黒いテンテンになった
時間とお金がかかり過ぎる
エステで受けたレーザー脱毛に関して・・・ なかなか数が減らない
また生えてきた
照射部がやけどのように赤くなってヒリヒリ痛む、かゆい
時間とお金がかかり過ぎる  など。
 これらの問題の原因は今までの説明で充分お分かりになって頂けたと存じます。
前述しましたように、私はエステの全てを頭ごなしに否定するものではありませんが手に負えないトラブルが発生した時に、最後は結局、私達皮膚科医のところに問題解決に来ざるを得ないという現実がある以上、初めから脱毛はしかるべき医療機関で受けられるほうが安心かつベターではないかということを結語に今月は稿を終えましょう。
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