診察室だより
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2月 かぶれとアレルギー
陽射しが日毎に明るくなって、早春の寒の戻りが彼方に消え去るのもあと一息、本格的な春の訪れが待ち遠しい此の頃ですが、皆様お変わりございませんか?

お花屋さんの店先でピンクや黄色、薄紫、いろいろの春のお花が私たちの目を楽しませてくれるこの時期は、花が大好きでガーデニングが趣味の私には1年で一番好きな季節の訪れです。毎日せっせと花がら摘みや水やりに精を出す日々の始まりですが、如何せん、相当の花好きの私にもかぶれてしまってさわれないこの時期の「花」があります。
それは右の写真の「桜草」(プリムラオブコニカ)です。
「あれ?この花は見たことある、かぶれるの?」と思われる方も多いと存じます。

今月は、「美しい薔薇にはトゲがある」ならぬ、「美しい桜草には毒?がある」、カブレとアレルギーのお話を致しましょう。
桜草
Q: 普段、私達は”かぶれる”という言葉を何気なく使いますが、まずこの本態は?
A: ”カブレ”のことを皮膚科の言葉で接触皮膚炎と言います。
文字通り、触ったり塗ったり、皮膚に接触したのがもとでかゆいブツブツや水ぶくれなど皮膚炎の症状をおこすものです。その成り立ちから、原因となる物質の刺激がもとで触れてすぐ反応の出るタイプ(一次刺激)とアレルギー反応によるタイプとの2種類あります。
Q: 例えば、具体的に一次刺激を起こす物質としてはどんなものがありますか?
A: 化学薬品のようにそれ自体に毒性のあるものや、シャンプー、洗剤など後で必ず洗い流すようになっているものはそのままにしておくと接触皮膚炎を起こします。
Q: では、アレルギー性のものにはどういうものがあるのでしょうか?
A: 原因となる物質は実に沢山の種類があります。
とても全部あげるのは無理ですので、日頃よく見る例をあげてみましょう。
まず革製品では時計のベルト、手袋、車のハンドルなどで、そのほかに、ここ数年「なま足」とかいうそうですが、夏場、素足に皮のサンダルを履いているうちにかぶれるようになってしまい来院される方が増えました。
また、ピアスの金属アレルギーは誰しも知るところですが、ネックレス、指輪など他のアクセサリーやバックルも、特に合金の場合はその含まれる成分、ニッケル、クロム、コバルトなどにより接触皮膚炎を起こします。
あと、意外に皆さんが気がつかないのが金属製の睫毛カーラー(ビューラー)とジーパンのボタンで、目のふちやおへその横に、かゆいブツブツや赤い斑点がくりかえして治らない場合は疑ってみましょう。
次に植物ではウルシ、ハゼ、カクレミノ、桜草など、そして果物ではマンゴー、キウィなどがあげられます。
Q: 一次刺激とはどこが違うのでしょうか?
A: 症状は殆ど同じです。触れたり塗ったりした部分に一致して赤くなったり、かゆいブツブツが出たり、もっとひどい時は水ぶくれになり「ツユ」(滲出液)がじくじく出たりします。
アレルギー性の接触皮膚炎の場合は、今まで触ったりつけたりしても大丈夫だったものに、ある日、突然かぶれるようになってしまうもので、今まで大丈夫だった分、自分では原因が全く思い当たらないことが多いものです。
Q: その仕組みについてもう少し詳しく。
A: 私達の体にはウィルスやバイ菌など異物の侵入身を守る「免疫」という仕組みがあり、この仕組みが過敏に反応しすぎて、かえって不都合をもたらすことがあり、これを「アレルギー」といいます。
例えば花粉のようなアレルギーのもと(アレルゲンとよびます)を、くりかえし吸ったり触ったりすることにより、そのものに反応する物質(抗体とよびます)が体の中で作られ、いっぱいになったところで突然発症します。(これらのことを皮膚科の言葉で「感作される、感作が成立する」と表現します。)
しかも体はいつまでもこれを記憶しており、触れば何度でもかぶれ、慣らすということができません。

最初は触っても大丈夫だったのに、いつの間にかかぶれるようになってしまった私の「桜草事件」は、鉢を触った右手に一番ひどく小さい水ぶくれが出て、寝ながらも掻いている位痒くて、おまけに知らずにその手で触ったらしい右目の回りは真っ赤に腫れ上がって、数日、四谷怪談のお岩さんのような顔で診察しました・・・・。
そしてこの原因は「桜草」の葉や茎に含まれるプリミンという物質が原因であることを後から勉強しました(笑)。
Q: 今日まで大丈夫だったものが明日も大丈夫だと、安心は出来ないということですね?
では、普段どのようなことに気をつければよいでしょうか、また、かぶれた場合の治療はどうすれば?
A: 塗り薬では副腎皮質ホルモン(ステロイド)が最も効果的です。掻きこわしてバイ菌がつくとトビヒのようになったり、症状が長引くうちに黒ずんで、シミのような色素沈着になり何年も消えなくなってしまうことも多々あります。
日常生活では再発予防が最も大切です。原因を突き止め、はっきりすれば近寄らないことです。
しかし現実問題として、私達の身の回りには「かぶれ」の原因となる物質が無数にあり、真犯人を見つけ出すのは必ずしも容易ではありません。
思い当たる物が無い場合、あるいはこれはどうか?と疑問に思う場合は皮膚科でパッチテストをしてもらうとよいでしょう。皮膚科のパッチテストでは、そのもの以外にも、日常かぶれやすいものを集めた検査のキットがあり、一度に沢山の種類を調べることが出来ます。
お困りの場合は治療のみならず、「犯人さがし」もお近くの皮膚科にご相談されることをお勧め致します。
追記: リップクリームによる接触皮膚炎
なかば習慣のように荒れてもいないのにリップクリームを塗り続けて、感作された結果、接触皮膚炎を発症。
唇のへりに痒い小さい水ぶくれが出来、その後ガサガサになる。そこで本人はまた荒れたと思い、また塗って更に悪化する。日常よくみられます。
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